【感想】加藤シゲアキ『オルタネート』SNS時代の青春群像をリアルに、そして普遍的に描く
本屋大賞2021発表までにノミネート10作品全部読……めたら読みたいな。
という気持ちで手に取りました本屋大賞2021ノミネート作品『オルタネート』についての感想です。
『オルタネート』書籍情報

オルタネート
加藤 シゲアキ(著/文)
発行:新潮社
四六変型判 384ページ
定価 1,650円+税
ISBN9784103537311
CコードC0093
初版年月日2020年11月20日
『オルタネート』あらすじ
タイトルの「オルタネート」は本作に登場する高校生限定マッチングアプリの名称である。
またalternateという単語は「交互に起こる、交代する、交流する、代わりのもの」などの意味を持つ。(本文参照)
本作はこのマッチングアプリ「オルタネート」を中心に物語が展開する。
メインの登場人物は三人。
「オルタネート」と距離を置く調理部の蓉(いるる)は、料理コンテストでの失敗を引きずっている。
真実の愛を求める凪津(なづ)はその術として「オルタネート」に傾倒する。
高校中退し「オルタネート」が使えなくなった尚志(なおし)はあてもなくさまよう。
そんな三人の、そして三人をとりまく人々の青春群像劇である。
世界の構築
著者の作品を読むのは、これが初めてだった。
というのも、著者のバックボーン——つまり現役バリバリのジャニーズアイドルであるということ——が、なんとなく僕を遠ざけていたのだ。
しかし読み始めてすぐ、そんな偏見や食わず嫌いを後悔した。
物語の核となるのは、高校生限定のマッチングアプリ「オルタネート」。
この架空のアプリケーションが、もの凄く自然に浸透している、東京。
それは現実の社会と同じようで異なる、この物語だけの世界だった。
世界を見事に構築し、その中にぐいぐいと引き込んでくる手腕に驚かされた。
最初の1、2章を読んだだけで、著者がどうとか、そういったことは頭から吹き飛び、ただ純粋に物語の続きが気になって仕方なくなっていた。
器の新しさ、中身の普遍さ
マッチングアプリを使いこなす高校生たち、というイマドキの若者をリアルに描いている。
けれど彼らの悩みは誰もが経験したような、青春時代特有の苦しくて切なくてけど振り返れば懐かしく感じるような、そんな普遍的なものだった。
だから、内容が時代を追いすぎていて大人が読んでも共感できない、ということはない。
逆に、古臭くて最近の若者は読めない、ということもない(と思う)。
そのあたりの塩梅が絶妙で、幅広い年齢の読者が楽しめる物語なのではないかと感じた。
キャラ読み
本作のなかの僕の推しは、調理部の蓉(いるる)の友人で園芸部のダイキ。
元気で、可愛くて、まっすぐな性格で。
これだけでもう好きだーって感じだけど、ほかにも共感できるポイントがあって、そんなところも推せる理由。
本当はもっと、ここがこうでーあそこがああでーって語りたい。
んだけど、(もし未読の人がこれを読んでたら)ダイキについてはあまり色々知らない上で本作を読んでほしいから、ここであんまり言うのはやめておく。
こんな人におすすめ
いま青春を謳歌している人、青春の只中で迷い悩んでいる人、かつての青春に思いを馳せたい人……。
青春小説が好きな人はもちろん、群像劇が好きな人にもおすすめ。
三人の主人公とその周りの人々の話が、徐々に集まってきて、終盤ぎゅっと一つにまとまるのは、読んでいてとても心地よかった。
というわけで以上、【感想】加藤シゲアキ『オルタネート』SNS時代の青春群像をリアルに、そして普遍的に描くでした。ではまた。