【感想】映画『甘いお酒でうがい』はとにかく登場人物が魅力的だった!
まずタイトルで優勝
まず、タイトルがめっちゃ好きなんです。というか、最初はこのタイトルに惹かれて、この映画に興味を持ちました。
「お酒でうがい」だけで、強さとユーモラスな感じが伝わってくるんですけど「『甘い』お酒でうがい」をするんです。強さとユーモラスにチャーミングが重なるようなことをイメージしました。
映画を観終わって、本当にこのお話にぴったりなタイトルだと感じました。
あらすじ
「これは私の日記。誰が読むわけでも、自分で読み返すわけでもない、ただの日記…」
物語は、こんな主人公のモノローグから始まりました。
「ただの日記」と断っている通り、大きな何かが起こる冒険譚ではありません。40代独身OL川嶋佳子さんの、静謐な、しかし喜びや悲しみに揺れる日々が、丁寧に綴られます。
自転車が撤去されたり、その撤去された自転車と再開したり、「お母さん」に想いを馳せたり、変化を求めていつもと反対の電車に乗ってみたり……。
そんななんでもない、けれど機微の詰まった、ある女性の暮らしのお話です。
映画情報

『甘いお酒でうがい』
『甘いお酒でうがい』公式HPより(一部抜粋)
松雪泰子 黒木華 清水尋也
監督 大九明子
脚本 じろう(シソンヌ)
原作 川嶋佳子(シソンヌじろう)『甘いお酒でうがい』(KADOKAWA 刊)
制作プロダクション C&Iエンタテインメント
制作 吉本興業、テレビ朝日
製作·配給 吉本興業
みどころ
この物語の個人的好きポイントは、登場人物が魅力的なところです。
特に、メイン(?)の3人が、三者三様に素敵なんです。一人ずつ語らせてください。
川嶋佳子
松雪泰子さん演じる、40代独身OL佳子さんは、なんとも掴みどころのない人でした。
思ったよりも強くて、思ったよりも弱いのがこの人。日々の生活に楽しみを見出すのが上手で、そのへんのおじさんにすら優しく寄り添って、だけどちょっとしたきっかけで落ち込んで、悲しくなって。
よくあるフィクションのなかの、バリバリごりごりの強くかっこいい独身女性とは、一線を画す存在です。
しっかりとした芯を持っているけど、同時にか弱い。こんな風になりたいな、というよりは、こんな人と友達になりたいな、というような、等身大のリアルな温度を持った優しい人物でした。
若林ちゃん
黒木華さん演じる若林ちゃんは、明るく朗らかに我が道を行くけどすごく優しい、佳子さんのキュートな後輩。
大人しい佳子さんをぐんぐん引っ張ってくれる、年下だけど頼もしい友達です。
歳の差を感じさせない、遠慮のない振る舞いは、佳子さんに遠慮させないためだったりするのかな。大好きゆえに佳子さんに腹を立てる場面も、良かったな。そんな風に感じました。
彼女のまっすぐさに惹かれたのは佳子さんだけではありません。スクリーンのこちら側で、僕も大好きになりました。
岡本くん
清水尋也さん演じる岡本くんは、佳子さんより約二回り歳下の男の子。若林ちゃんの後輩です。
飄々と自然体な彼は、かっこよさを出してきたかと思えば可愛くなったり、ああ可愛いと思えばかっこよかったり。
佳子さんとの些細なやりとりに、僕は佳子さん以上にキュンとさせられました。
まとめ
何気ない日々と気持ちの積み重ねを、優しく寂しくユーモラスに描いた本作。
ちょっと疲れた時、ほっと一息つきたい時、何も言わずにそっと寄り添ってくれそうな、そんな作品でした。
(2020年12月21日追記)
個人的2020年映画ベスト10とそのほか観た作品の一口メモ (第3位)で取り上げました。