9月の読書感想(読書メーター)まとめ

『正欲』朝井リョウ

この、えぐさ。さすが朝井リョウ。著者の作品はいつも「そうそう、言葉にならないその感覚、見事にあらわしてくれた!」と思わせてくれる。……だけじゃない、その先。無意識に抱えていた、見ないようにしていた、そんな何かを抉り出して突きつけられる。読後、うかつに語るのを憚られるような、けれど誰かと語らずにはいられないような、そんな力がある。内容については、何を言ってもネタバレになりそうで、とにかく読んでとしか言えない。読んだら世界が変わるから、と思う反面、いや結局変わらないんだよな、とも思う。朝井リョウ、えぐいて。

『風味絶佳』山田詠美

表紙のデザインに引っ張られて、甘い話なのかと思って読み始めたけど、違った。そこで「風味」と「絶佳」を引いてみた。合わせると「味わいがすぐれていて美しい」というような意味になるのだろうか。なるほどその味わいは、甘くて苦くて複雑で、しかし確かに美しかった。美しかった、ように思う。けれど、僕には少し難しかったのかもしれない。味わいきれなかったように思う。もっと、もっと、舌を肥やして、その風味を余すとこなく堪能できるようになりたい。

『ご本、出しときますね?』BSジャパン/若林正恭 編

もう、やばい人たちばっかり。もちろん、いい意味で。オードリーの若林さんと、二人の作家さん、各回三人でトークする。独特な感性や言葉選びが炸裂し、思わずニヤリとしてしまう箇所多数。ただし……自分の平凡具合を改めて自覚して若干凹んだ。別に、自分が特別だなんて思ったことはないけれど。敬意、憧れ、羨望、畏怖、その他湧き上がってきたごちゃ混ぜの感情を全部丸めて、最後に改めて言いたい。この人たちは、やばい。

『そして旅にいる』加藤千恵

旅をして、美味しいご飯を食べたくなる、8編の物語。ありふれた、けれど切実な、それぞれの抱える問題やわだかまりが、旅を通じてほどけたり、ちょっと軽くなったり、見つめ直せたり。親しみやすい文体と、サクサク進むテンポ感で、するりと読めた。第6話「パノラマパーク パノラマガール」が特に好きだった。

『キッチン』吉本ばなな

表題作「キッチン」とその続き、そしてもう一編、あわせて三つの話が収録されている。どれも悲しくて苦しくて、けど温かで優しくて、それでいて強い。登場人物たちの機微を描き出す言葉選びやリズムが心地よい。スマホどころかケータイも出てこない、という以外ほとんど時代を感じさせない、とても普遍的な物語。もっと早く手にとっておけば良かった。

『娼年』石田衣良

初めて読んだのは中学生の頃だった。意味もわからず手に取って、性の話とわかると昂った。けれど読み進めていくうちに、興味は性そのものから、性を通して描かれる人間の本質のようなものへと移っていった。あとはそれを浮き上がらせる文章表現。と言っても、子供だった僕にその内容のどれほどが理解できたか定かでない。その後、今ならわかるだろうか、と何度か手に取った。大人になったはずの今読んでも、やっぱりどれほど理解できているか。けど、その大きさ、広さ、深さ、複雑さ、そういったものを、以前よりは感じられている、そんな気がする。

『君は永遠にそいつらより若い』津村記久子

現実に揉まれて小さくなってしまうことがほとんどの「優しさ」を、まるのままの大きさで抱え続けている。主人公のホリガイさんのことを、そんなふうに思った。そんなんじゃ生きにくいけど、そうせずにはいられない。上手くいかないことがたくさんあって、ギリギリのところで折り合いをつけている。彼女みたいには生きられないけれど、その真っ直ぐさに憧れを抱いた。

『リボルバー』原田マハ

謎に次ぐ謎にハラハラ、出てくるアートにわくわく、そして登場人物たちの心情にどきどき。ミステリーも、アートも、エモーショナルも、まとめて楽しめた。一度で三度美味しい。けど、味わい尽くせなかった。もっと美術の素養があれば、きっともっともっと美味しかったはず……!それだけがちょっぴり悔しい。

まとめ

オール(といっても3作だけど)はじめましてだった先月と比べて、9月はバラエティに富んでいました。

好きな作家さんの新作、好きな作品の再読、はじめまして、そして小説から離れ対談集も。

はじめましての中で特に心に残ったのは『キッチン』『君は永遠にそいつらより若い』『リボルバー』でした。

『キッチン』はこれが名作か……と圧倒されました。『君は永遠にそいつらより若い』は共感と憧れを抱きました。

そして『リボルバー』ですが、ミステリー慣れしていない僕でも読みやすかったです。また、アートにも興味があるので、それを軸としたストーリー展開はとても興味深かったです。

今月は意識的にたくさん(当社比)読めたし楽しめたので、来月もこの波に乗っていけたらと思っています。