【感想】『リスタートはただいまのあとで』二人の心を、光と影を、空気を、繊細に描く。【映画】

2020年12月21日

まずはじめに、ストーリーには全く関係のないところで本当に申し訳ないのですが、言わずにはいられないのですみません。

古川さんのご尊顔が美しすぎて、それを大きなスクリーンで、あんな分量で拝見できるという、もうそれだけで十二分に元が取れたと個人的には思いました。はい。

『リスタートはただいまのあとで』
古川雄輝 竜星涼
監督:井上竜太

あらすじ

で、内容です。孤塚光臣(古川雄輝)は嫌気がさして出て行った田舎に、10年ぶりに戻ってきました。その田舎で、農家の養子として農業に精を出すのが大和(竜星涼)です。二人は出会い、お互いに影響しあい、それぞれの転機を迎えます。と、おおまかに言うとこんな感じです。

BLだと思って観に行ったんですが、そして実際にBLではあったんですが、それはあくまで一要素に過ぎなかったように感じました。

※以下、感情の昂りと共にネタバレが発生する可能性がありますのでご注意ください

光臣も大和も、それぞれが問題を抱えている。表面上は正反対に見える二人だけれど、抱えている問題は同じように感じた。どちらも自分と向き合えていない。だから、他者ともまっすぐに向き合うことができないでいる。そのこととどう向き合うのか。それを丁寧に描いている、というのがBLだけじゃないと言った所以です。

が、そう思っていたけど、書いてて気づいたけど、その、それぞれが「自分の問題と向き合う」きっかけだったり、その過程を支えたりに、常にお互いがいるんだから、これをBLと言わずして何をBLと言うんだという話になってくる。やっぱり、めちゃくちゃBLでした。すみません。

で、そんな本作ですが、特に好きだなと感じた3つの部分を見どころとして紹介させていただきます。

見どころ①古川雄輝さんの表情による演技

光臣が、大和に対する自身の恋心を自覚するシーンがあります。そこは誰ともやりとりがなく、モノローグもなく、ただ一人光臣が、声も出さずに座っているだけです。

そんな場面で、微妙な表情の変化だけで、感情の昂り、恋心の自覚、自覚した恋心に対する戸惑い、といった一連の感情のうねりをダイレクトに訴えかけてくるのです。

何も喋らず、体も動かさず、そんなことが出来るのかと衝撃を受けました。

見どころ②竜星涼さんの懐っこい演技

大和は、はじめて光臣に会った時から、かなり、異常なほどに、フレンドリーでした。その馴れ馴れしさに、光臣は引いていたし、鑑賞している僕も、光臣の側に立って引いていました。

けれど、その人当たりの良さ、笑顔にだんだんとほだされていく光臣。気付けば、観ている僕もその笑顔が大好きになっていました。大味にみえてかなり繊細に人との距離をはかる大和と、それを丁寧に演じられた竜星さんとの、ふたりの魅力にやられた結果なのかなと思いました。

そしてこれは、本作に直接関係は無いのですが、ついこの間観た弱虫ペダルのキャプテンと同じ役者さんだというのが未だによく呑み込めていません。振り幅!

見どころ③空気の描写

二人の繊細な心のうちを描くのと同じように、光や影、空気感の描写もとても丁寧だったように感じます。

特に冬のシーンでは、冷たく澄んだ長野の空気が画面から伝わってくるような気がしました。

こういった微妙な光の柔さ硬さ、影の暗さ明るさ、空気の澄んだ濁ったが邦画の醍醐味のような……すみません、知った風な口を利きました。

まとめ

古川さんや竜星さんの演技、空気の描写、それらに共通するのはその繊細さのように思います。丁寧に繊細に作られた物語というのは、特別なにか派手なことがなくても、鑑賞者をこんなにも引き込んで包み込んでくれるんだなと感じました。

(2020年12月21日追記)
個人的2020年映画ベスト10とそのほか観た作品の一口メモ (第8位)で取り上げました。