桑園Twitter文庫企画に挙げさせてもらった村山由佳『BAD KIDS』に救われた僕の話。

面白そうな企画に出会った。

未来屋書店桑園店さまの、桑園Twitter文庫という企画だ。

オススメの文庫本を、140字以内のリプで紹介するという企画。

そこから選ばれたものは店頭でPOP付きで展開されるという。

いろんな人がいろんな本を挙げていたので、僕も紹介させてもらった。

楽しんで参加させてもらったのだけれど、紹介文は140字以内。

その本を選んだ理由や、僕の個人的な出会いや思い入れについて書く余地はなかった。

ということで、その140字に入りきらなかった分を、この記事に書いていきたい。

選書理由

一番感動した文庫本、面白かった文庫本、勉強になった文庫本……つまり、オススメの文庫本。

僕にとってのそれはなんだろう。

こういうのは、タイトルを選ぶ時からもう楽しい。

好きな本をいろいろと思い浮かべてみた。けれど思い浮かべたものの多くが、なにか賞を獲得していたり、出版社のフェアによく選書されていたりするものだった。

それらはそれらで大好きで、とてもオススメなんだけれども、せっかくならちょっと違うものを選びたい。

というわけで僕は勝手に、選書の条件に「あまりフェアなどで取り上げられているのを見かけないもの」というのを付け加えた。

その上で改めて、本棚と睨めっこする。

すうっと自然に手が伸びたのが、今回紹介を書いた『BAD KIDS』だった。村山由佳先生の作品である。

村山由佳
『BAD KIDS』

集英社文庫

※以下、村山由佳『BAD KIDS』の内容について触れる箇所があります。未読の方はお気をつけください。

村山由佳『BAD KIDS』との出会い

僕が最初に触れた村山由佳作品は『天使の卵』だったと記憶している。中学生の頃だった。もうかなり昔のことだから、ちょっと確信はもてないけれど、たぶんそう。

それで、その繊細な世界観にハマって、氏の作品を読みあさった。

ちょうどその頃、僕は自分がゲイであることを自覚しつつあった。しつつあったというか、本当は自覚していたけれど、それを受け入れることが出来ないでいた。と言ったほうが正しいかもしれない。

僕が『BAD KIDS』に出会ったのはそんな時だった。

救われた。

とてもチープな言葉かもしれないけれど、僕はこの作品に、本当に救われた。

主人公の一人である隆之は、同性の幼なじみに恋心を抱いている。そんな自分に嫌悪する彼の心境が、自分と重なった。

そしてもう一人の主人公である都は、それを自然なこととして受け止めてくれた。自分が、受け入れられたような気持ちになった。

都は受け入れてくれるけど、隆之の恋は実らない。そこもリアルで、変にうまくいくよりも好きだなと感じた。

男が好きだなんて誰にも言えないし、こんな気持ちの悪い奴は世界に一人だけかもしれない。それくらい思いつめていた僕にとって、同じような悩みを持つ隆之の存在はとても心強かったし、都の存在もまたかけがえのないものだった。

もちろん、ふたりがフィクションの世界の住人であるということは十分にわかっていた。

けれど、こんな二人を生み出してくれた村山先生は、きっと僕のことを軽蔑したりしないだろう。そう思うと心が少し軽くなった。

それに、この本が一定の支持を得て世に出ているということは、自分と同じような悩みを抱える人や、そんな悩みをなんでもないと受け入れてくれる人も、世の中には少なくないのかもしれない。なんて希望も抱いた。

『BAD KIDS』の好きなところ

この作品の一番好きなところは、恋や愛について真正面から描き切っているところだ。

「20歳も年上のカメラマンと関係をもつ」女子高生

とか

「同性の幼なじみに想いをよせる」男子高校生

とか

そういうガワだけを見ると、センセーショナルだったり、色物だったり、もしかしたら逆にありふれたもののような、そういう見方をされるかもしれない。

けれど、この作品の本質はそこにはない。

都と隆之という二人の高校生が、うまくいかない恋にもがき、苦しむ。

その胸の痛みは、やるせなさは、それでも想ってしまう愛しさは、どこまでもまっすぐで、純粋なものだ。

自分や相手の属性なんて関係のない、普遍的なその「想い」が、強く胸に迫るのだ。

だから僕はこの作品が大好きで。

逆に言えば、そうでなければ例え同性への恋心が描かれようがそれを肯定されようが、こんなに好きになることはなかっただろう。

時代について

本書が最初に刊行されたのは1994年だという。

僕が初めて読んだのはそれから十数年後、2000年代中頃〜後半である。

そしてそこからさらに十数年を経た現在。

というわけでゲイ(隆之は厳密にいうとゲイじゃないかもしれないけれど)を取り巻く環境とか空気とかはいろいろ変わっていて。

今と違うなーと思う部分もあれば、三十年近く経っても共感できるポイントもあったりと、改めて読むとそのあたりも興味深かった。

(ゲイどうこうは関係ないけど、スマホはおろかケータイだって無い時代。家電の描写もある)

今の若い子が読むと、当たり前だけどまた違った感じ方をするのだろう。

長く愛される作品のおもしろさというのは、こうやって様々な世代の人が、いろいろな新鮮さを感じながら楽しめるところにもあるのかな、なんてちょっと思った。

最後に

企画に送らせていただいた紹介文を残しておく。

というわけで以上、桑園Twitter文庫企画に挙げさせてもらった村山由佳『BAD KIDS』に救われた僕の話。でした。ではまた。